先行者利益/First Mover’s Advantage
では、具体的にどのような利益があるのでしょうか?
教科書的には格好よい言葉でまとめられていますが、ここでは敢えて自分の言葉で説明したいと思います。
まず1番のメリットは「記憶されやすい」ということ。
人間の記憶の特性として「1番」はとても記憶されやすいです。例えば1番最初に飛行機を飛ばした人は、 ライト兄弟ですが、2番目3番目に飛行機を飛ばした人はほとんど知られていません。女性初のイギリス首相マーガレット・サッチャーさんがもし男性だったら、そこまで有名にならなかったかもしれません。
記憶されやすいと言う事は認知されやすい。そして、広告費が少なくて済みます。
私の記憶に新しいのは、LCCのピーチ航空です。今から5年ほど前に日本版LCCが導入された際、ピーチ航空が最初に市場に参入し、PR戦略を使って費用をほとんどかけずに「日本のLCC=ピーチ航空」というブランドイメージを確立させました。その後参入したジェットスター・ジャパンが多大な広告費をかけてTVCMを打って応戦しましたが、全く費用をかけなかったピーチの方が多くの人々の印象に残る結果となりました。
2つ目のメリットは「大きなシェアを楽に取れる」と言うこと。
理由は簡単です。競合がいないのでシェア100%でスタートできるのです。後に競合が入ってきても100のうちいくらか切り崩されるだけで主導的地位は変わりにくい。
こうして市場の主導権を握ることができると、良い技術や材料、人材などを他社に先駆けて獲得しやすくなります。コストも安く抑えることができます。
3つ目は「価格競争に巻き込まれにくい」というメリット。
競合よりも多少高い価格でも物が売れる。これは1つ目と2つ目のメリットの結果でもあります。名前が知られていてシェアも高いので「信頼感」がある。すると値段が少し高くても大丈夫。他社による値下げ合戦を高見できるようになります。
例えば歯磨き粉でGUM(ガム)という商品があります。GUMは今から30年近く前に発売開始されて、日本で最初に「歯周病予防」を謳ったブランドです。その後他社より沢山の「歯周病予防」商品が生まれましたが、他社より多少高い値段であっても安定的に売れ続けています。
まとめ
会議や授業で最初に発言するのに勇気がいるように、他社に先駆けて初めて市場導入を行うと言うのはリスクを伴います。しかし、一度先行者と言う位置づけが形成されるとそれを覆すのは難しく、そのブランドは長期にわたって費用を抑えて高い収益を得ることができるので、非常に効率的な賢い戦い方と言えます。
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