「老舗病」はあなたのすぐ身近に。
先日、テレビを点けたら偶然やっていた番組「林修のニッポンドリル」に思わず見入ってしまいました。
「表舞台から姿を消した大ヒット商品の今を大調査」というコーナーで取り上げられていたのが「森下仁丹」の赤字30億円からの大逆転回復劇。
コーナーの締めくくりに林先生が言っていた一言にハッとしました。
「老舗病」
「老舗病」とは?
老舗病とは読んで字のごとく、長年続いてきた老舗企業に起こりがちな現象。
「過去の成功体験が忘れられず、変化を好まない」体質のことを言う。
森下仁丹の駒村社長曰く、
「ブランドに甘えて、アイデアを練って新製品を開発し、差別化を図って市場を作るという発想が育っていなかった。事業の計画性も推進力もなく、空回り。なのに危機意識は薄い。老舗が陥りやすい病気のような状態になっていたんです。」
出典:産経新聞 https://www.sankei.com/west/news/170401/wst1704010008-n2.html
これがどういう状態なのか、よくわかる。
何とも言えない、どんよりとした空気。
会社全体に覇気がなく、毎日がただただ過ぎていく。
業績が日に日に下がっているのに、何も手が打たれない。
業績低下が気になっていないわけではない。
だが、危機を感じて声をあげたとしても、気だるい雰囲気に飲み込まれ、そのまま流れていってしまう。
「茹でガエル状態」
以前、勤めていた会社でそんな風に表現した人がいた。
ぬるま湯につかっているうちに、知らず知らずのうちに湯の温度が上がり、気づいたら茹で上がってしまい、手遅れになる。
「老舗病」はなぜ起こるのか?
「老舗病」は、何も老舗企業だけの話ではなく、どんな企業にも起こりうる話だと思う。
なぜかというと、これは人間の本能的な行動と関係しているから。
人間は本能的に現状を維持しようとする。
できれば、いつもやっていること、やり慣れていることを続けていたい。
新しいことをやるのは大変。
それよりは勝手がわかっているものをやった方が楽だし、確実。
ちょうど習慣づくりの難しさにも似ている。
ダイエットをやろうとしたり、悪習慣をやめようとしても、ついつい「3日坊主」になってしまうのは、私たちの意識には、現状を維持しようとする強烈な力が働くためだと言われる。
「まぁ、いいか」
「そのうち、やるさ」
これが個人レベルではなく、組織レベルで起こっているのが「老舗病」。
振り返ると自分自身だって「老舗病」にかかっているかもしれない。
昨年と同じことを踏襲する。
毎年そうやっているから今年も・・・
勝手がわかっているし・・・
気づいたら、やっていることのほとんどが「いつものアレ」ばかり・・・なんてことはないだろうか?
「老舗病」は決して他人事ではない。
どんな会社にもそして自分自身にも起こりうる、とても身近な病なのだ。
老舗病の克服方法とは?
「周囲が漠然とした風土になっている感じがしてなりません。会社全体がそういった危機感を感じ、全社的なプロジェクトとして進めていくにはどうしたらいいでしょうか?」
最近出会ったとある老舗企業の社員からの質問だった。
うめき声に近い悲痛な叫びに、何ともし難いもどかしさを感じたのを覚えている。
「老舗病」を克服するのは容易なことではない。
人間の本能的な現状維持の力が、組織レベルで発生しているのだ。
この大きな力は、ちょっとやそっとのことでは覆せない。
淀んだ水の流れを変えるには、いったん水をせき止め、川底を洗い、護岸工事をして流れの向きを整えて、再び水を流す必要がある。
これをするための最も迅速確実な手段は、トップ自身が変わること。そしてトップダウンで改革を断行すること。
森下仁丹が大逆転劇を起こせたのも、駒村社長が新鮮な目で社内を見回し、そして意を決して取り組んだからに他ならない。
ではトップではない社員は、指をくわえてトップが変わるのを待つしかないのか?
そんなことはない。
単純な話だが、トップダウンがダメなら、ボトムアップでやるしかない。
「とにかく声をあげること。」
老舗企業の社員にはそう伝えた。
「危機感を感じているのはあなた一人ではない。
だから必ず、あなたの上げた声に賛同してくれる人が必ず出てくる。
とにかく声をあげること。
そうして少しずつ味方を増やして、声を大きくしていく。」
彼は当惑した表情を浮かべていた。
説明が唐突すぎたのかもしれない。
あるいは「うわぁ、大変そう!」と思ったのかもしれない。
「マーケティング戦略」を武器として使う
「声をあげる」やり方は色々あるが、個人的にボトムアップ方式で恐らく最も効率的だと思っているのが、
「マーケティング戦略」
を活用することだ。
「マーケティング戦略」を作りそれを会社の何かしらの会議に何とかして持ち込む。そうすれば、社長や会社の上層部に対して正面切って堂々と訴えかけることができる。
マーケティング戦略なら飲み屋の愚痴で終わることなく、一端の社員が会社のトップに対して正々堂々と話す機会が与えられる。
マーケティング戦略なら批判のみに終わることなく、前向きな提案として伝えることができる。
その提案は会議で否決されるかもしれない。
たかが一社員の提案ごときでトップが簡単に変わることはないかもしれない。
だが、危機を希望に変えたいというあなたの真摯な声は
必ずやその場の何人かに届く。
必ずや何人かがあなたの声をきっかけに考え始める。
それが改革の第一歩となるのだ。