実費5万円以下で実施するグループインタビュー(後半)

先日、FRONDIA社主催として初めて行ったグループインタビューでかかった実費は3.9万円。

一般的な相場1グループ50万円に比べて破格の安さでできたのは、これまでの当たり前に大ナタを振るって、やり方をシンプルにしてみたからである。

【シンプル化①】インタビュー会場を普通の会議室で実施

グルインは通常「インタビュールーム」という、グルイン用に様々な設備が整えられた専用の会議室で行う。場所と設備にもよるが1回あたり4~5万円程度かかる。

普通の会議室との大きな違いは「バックルーム」がついているということ。参加者がいる部屋の隣に隠し部屋のようなものがあって、そこから参加者に見られることなく中の様子を見ることができるようになっている。

その他にも、備え付けの録音設備があったり、複数の角度からのモニター画面がついていたりと、至れり尽くせりの機能がついている。

それを今回は、専用のインタビュールームではなく、普通の会議室で行った。

「バックルーム」は当然、無い。グルインの様子を見学したい人は、現場スタッフとして運営を手伝いながら見てもらい、その場で見ることができなかった人には後日ビデオで見てもらった。

やってみた結果、特に不都合はなかった。現場の臨場感はビデオでも十分に伝わっていたし、参加者の方にも影響はなかった。

「インタビュールーム」はあればあったで良いが、普通の会議室でもリサーチは充分に可能。費用も1回1万円以下で済む。

【シンプル化②】Facebook広告でグルイン参加者をリクルート

「リクルート」とは、グルイン参加者を募集する行為のことを言う。通常はリサーチ会社に委託して1名あたり5千円~1万円程度で集客してもらう。

それを今回はFacebook広告で集めてみた。

案内文を作り画像を貼り付けて記事を投稿するだけ。広告を表示する地域だとか性別年齢を細かく設定できるので、集めたい対象者だけに広告を見てもらうことができる。

これにアンケートを組み合わせて「自宅で調理を週4日以上行う人」などにまで絞り込んだ。

結果、10名の参加者を集めることができた。かかった費用は5,800円。

グルイン参加者の募集は必ずしもリサーチ会社に依頼する必要はないと思った。

【シンプル化③】モデレーターを内製化

モデレーターとはグルインの司会進行役。モデレーターは専用スキルが必要とされる職業で、依頼するには時給3万円で安い方。人気モデレーターとなると時給何十万になることある。

これを担当のマーケッターが自身で司会進行を行うようにした。

モデレーターは「外部の人の方が、客観的な第3者の視点で意見を引き出せる」と言われる。

だが私は「内部の人間が行った方が臨機応変に対応できるし、様々な点で効率的」と考える。もちろんそれは、内部の人間がモデレーターとしてのスキルを持っていることが前提。

「第3者の視点で意見を引き出せる」かどうかは「外部の人間か内部の人間か」の違いではなく、モデレーターのスキルを持っているかどうかによる。スキルをきちんと使えば、内部の人間であっても、客観的に平等な観点で意見を引き出すことが可能だ。

逆にモデレーターを内製化するメリットも大きい。グルイン実施する目的や課題をモデレーターに伝える手間が不要だし、背景を深く理解しているため臨機応変に対応できる。

モデレータースキルはむしろマーケッターの必須習得スキルなのではないか。消費者を目の前にして表情や身振り手振りも見ながらリアルに話を聞けるのは、またとない貴重な機会である。

【シンプル化④】書記を雇わない

グルインでは専用の書記を雇って参加者の発言録を作成することが多い。費用は時給1~2万円。

発言録はあればあった方がいい。だが、そこまで費用をかけなくても記録はとれる。

いつもやっているのが、グルインの見学者全員で共同で発言録を作成する、というやり方。

1人目が自分が聴きとった内容をザッと入力して、2人目以降は1人目が聴き洩らした内容だけを追記していく。そうやって3~4人ぐらい追記していけば、かなり立派な発言録が完成する。

外部に委託すると、発言内容を一言一句正確に書いてくれるが、正直なところ、そこまで必要はない。また、各自が入力しながらグルインの内容を復習するという効果もある。

【シンプル化⑤】謝礼を省略

参加者に渡す謝礼も意外にお金がかかる。テーマにもよるが5千円~1万円程度、10人呼べば5万~10万円になる。また、現金の受け渡しだから、領収書をもらったり、会計上の処理を別途行ったり、と時間と手間が七面倒くさい。

そこで今回は「お土産の物品がもらえる」とした。

現金じゃないのでダメかとも思ったが、参加者はちゃんと集まったし、意外にみなさんとても喜んでいただいた。

逆に、現金目当てではなく、純粋にテーマに興味を持ってくださった方が集まり、変に気をつかわないで活発に意見を言っていただいたようにも感じた。

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以上が、通常のグループインタビューと違ってシンプル化した点だ。一言で言うと、グループインタビューにかかる作業の大半を内製化する、ということに尽きる。

グルインは内製化することによって効率化が可能である。

莫大なお金をかけて少ない頻度で行うよりも、もっと身近に実施して貴重な消費者の意見を聞く機会を増やした方が、より品質の高いマーケティングをするために重要なのではないだろうか。

(思わず熱が入り、長文になってしまいました。スミマセン)